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スズメバチのピークは9月から10月
春から秋にかけて活動する昆虫の一般的なイメージでは、七、八月の 真夏が活動のピークのように思われがちです。事実、アシナガバチの場 合は、八月にピークを迎え、新女王バチと雄バチを生産すると、急速に ュロニーの子育ては中止されます。しかし、スズメバチの場合はアシナ ガバチと比べてもだいぶ長くなります。たとえば、アシナガバチを餌と するヒメスズメバチの活動期間は短いのですが、それでも九月前 半を ピークとしています。セミをおもな餌としているモンスズメバチがそれ に続きます。コガタスズメバチ、キイロスズメバチ、オオスズメバチな どは比較的遅くまで活動が続きます。女王バチの寿命が長いコロニーで は、解散が一二月に入ってからの場合もしばしばあります。
スズメバチの生活史は、次のように五つのステージに分けて見ること ができます。
スズメバチの生活
1営巣前(新女王バチが越冬から目覚めて、営巣場所を決定するまで)
2創設女王営巣期(新女王バチによる巣づくり開始から働きバチの誕生 まで)
3女王バチと働きバチの共同営巣期(分業がはっきりし、コロニーが大 きく発達)
9新女王バチと雄バチの育成期(繁殖個体の生産) の結婚から越冬へ(新女王バチと雄バチの結婚飛行への旅立ちとコロ ニーの解散・新女王バチの越冬)
ところで、なぜ、スズメバチは長期の活動が可能なのでしょうか。 それは、第一に、スズメバチの巣の構造にあるといえるでしょう。ア シナガバチを例にして比べてみるとそれがわかります。アシナガバチの 巣では育児室(育房)が外気にむき出しの状態でさらされているのです が、スズメバチの巣では、必ずおおい(外被)がありますし、巣盤の数 も、アシナガバチが一段なのに対し、スズメバチの巣ではふつう数段か らなり、大きなコロニーになると、ときには十数段にもなることがあり ます。とくに、キイロスズメバチやュガタスズメバチでは、巣は気密性 が高く、八月の後半に入ると、外被の厚さは数センチから一○センチを
超えることがあります。厚い外被は、空気室をいく重にも重ねた状態と
初期のオオスズメバチの巣。出入り口は二、三センチの穴が一か所ついているだけですから、 外の温度の変化に影響されることが少なく、巣の内部は三〇度を超える 温度に保たれます。オオスズメバチの巣の構造は、釣り鐘のような外被 があって下部が開放されていますが、地中や木のうろのなかにあるため、 巣内は暖かい状態に保たれるのです。実際、秋のはじめに両種の巣を採 集することがありますが、巣內はたいへん暖かく、育児にも適した温度 を保っているものと考えられます。その結果、スズメバチはほかのハチ たちよりも長期の活動が可能なのです。